(田儀) - 波根 - (久手) (訪問日: 2018/05/01)
掛戸松島から海岸沿いの県道を通って波根駅へ。駅の周りや駅そのものも久手駅とそっくり。違いと言えば、ここの駅舎前の植栽が松で、待合室の出札窓口が昔のままの木製だというくらい。あとはホームが島式1面2線というところ。
駅舎は海向きで木造平屋瓦葺(JRマーク付き)、無人駅で券売機は無し。待合室にはトイレ設置。駅前に駐車区画は無いけど5~6台程度駐車可。駐輪場は駅舎右手に屋根付きで約20台分。売店、食堂は駅舎、周囲にも見当たらず。海水浴シーズンなら何か店があるかも。建物財産標は駅舎では未確認、ホーム上の待合所で確認。
ホームは島式ホーム1面2線。ホーム長は157歩。下はホームから見た出雲方向と大田市方向。
作家 芥川龍之介下車来遊の地
波根駅が開業したのは大正四年七月十一日である。それから間もない八月のある日、芥川龍之介は第一高等学校以来の親友、井川恭(松江出身)と共にこの停車場に降り水月亭に宿をとった。(井川恭28才、芥川龍之介24才の時である)二人は海にのぞんだ椽に腰掛け、眺望の素敵さに「佳いね!ほんとにいいね!今夜ここへ来てよかった。」とお互いに言い続けた。
夕方の海に飛び込み浪のうえに手足を浮かせ水の思うままに揺さぶられていた。ちょうどその折、太陽は海の涯に沈んでいった。「あっ、うつくしい!」二人はうれしくてたまらないように叫び「日の終焉」の栄をほめたたえた。
明くる朝、鰐走り(掛戸)まで散歩し正午過ぎの汽車に乗り二人は今市に向かった。
「愛すべき波根の村よ!美しかった昨夕の日没よ!」と心の中にさけびながらトンネルに入った。
(井川恭著「翡翠記」による)
芥川の訪れた時代と変わらず、駅の目の前はすぐに海水浴場の砂浜です。